夜燭言 仲合、同盟会話
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仲合物語
剣塚の面会
予想通りに扉か叩かれ、外から男の笑い声が聞こえた。
夜燭言:私だ。
扉を開くと燭言が入ってきて、更に微笑んだ。
夜燭言:お久しぶり。
日差しが窓を越えて彼の顔を照らした。相変わらず爽やかな表情だった。
言うまでもなく彼は席に着いた。
その真っ黒な瞳は何かを尋ねるかのように私を見つめた。
無剣:丁度いい。
今用事があるから、手伝ってくれない?
夜燭言:無剣が困っているなら、当然だ。
無剣:ありがとう。
無剣:春に酒屋に頼んで、酒をいくつか醸造してくれていた。今飲む気分になったわ。
無剣:あなたなら酒を楽しめる人だから、一緒に飲もうかと思って。
夜獨言はすぐに返答してくれなかったが、
私の言うことを噛み締めているように、薄く不思議そうな顔をした。
夜燭言:醸造?
夜燭言:お前と俺は長く付き合っているが、剣塚の主がこの手の興味を持っているとは知らなかったな。
無剣:はは、当然でしょうね。
私は説明せずにそっけなく一言を言った。
無剣:行きましょうか。
夜燭言:今から?
無剣:もしかして、夜獨言さんはお化粧でもする気?
夜燭言:……行こうよ。
夜燭言は首を振って、珍しく少々気まずい顔を見せた。
夜燭言:はは、俺自身よりもお前の方が俺のことをよく分かったみたいんだな。
酒取りの途中
無剣:……身に付けるのは?
夜燭言:ここ数年を渡って、全土を踏破して、秀麗な風景と壮大な楼閣を何度も見てきたんだが、
今ここの景色に勝るものはなかったんだ。
竹林を飾った星屑のように明滅する蛍、
また夜空に浮かぶ銀色の満月を見つめ、夜燭言は思わず感激した。
流れる渓流に落ちた星と月がその水を照らして、非常に美しい光景だった。
夜燭言:その酒はここだよな?
私は頷いてまた首を振った。
無剣:合計三つの甕があって、ここはその一つ。
無剣:残りの二つはまた別の場所に置いているから、あとで行こう。
夜燭言:こんなに麗しい場所を、また二つ観覧できるなんて得をした気分だな。
無剣:ついて来て。
夜燭言を連れて竹林に入って、十三本目の竹の下から、長く埋蔵された酒甕を掘り出した。
夜燭言:地下に埋まっても香りが溢れ出るほど良い酒なんだな。
無剣:当たり前よ。
じゃあ次行こうか。
夜燭言:行こう。
夜燭言と喋ったり観光したりしながらゆっくり歩いて、気分がとてもよかった。
彼の言動に豪気と自由を感じた故、話していると自然に近寄りたくなった。
誰かと談笑しながら江湖を見て回る、それこそが私の望んでいた未来なのかもしれない。
早く酒を手に取りたかったが、一方、この道が永遠に続くことを願った。
無剣:あと少しだわ。
歩いているうちに、だんだん情花が茂っていくのを見て、目的地がすぐ目の前だと気づいた。
私たちの到着を予想したかのように、濃霧の中からあの姉弟が出迎えに来てくれた。
淑女:あら、そろそろだと思ったわ。
君子:その人は?
無剣:お二人ともお久しぶり。
こちらは友達の夜燭言。
淑女:友……達?
淑女は微笑みを浮かべた。
淑女:それでは、早速上がりなさい。「あの子」は本当に待ち遠しがっていたわよ。
二人が絶情谷の底にある巨石の前まで案内してくれた。
巨石の後ろの木陰の下に、塵まみれだったはずの酒甕だが、誰かが拭いてくれたように綺麗にあった。
無剣:お世話になったわ。
夜燭言:まさか情花を入れられたのかな?
夜燭言は冗談半分の表情で私を見つめた。
否定しようと思ったところ、傍らに淑女が眉を吊り上げて、刺々しく問い返した。
淑女:もし入っていたら、飲まない?
夜燭言:ははっ、情花どころか、
無剣の酒である限り、毒酒だって飲ませてもらおう。
桃花の約束
二つの甕が船尾に置かれ、波にゆらゆら船に乗っている間ぶつかり合ってキンキンと鳴った。
夜燭言:二種類の香りか混じり合った香りだ。もう堪えられないなあ。
無剣:もうちょっと我慢して。帰ったら、思い存分飲もうよ。
夜燭言:酔い潰れるまでな。
夜燭言:あそこは桃花島か?
船首が水面に浮ぶ花びらをよける。
接岸し、夜燭言が先に降りて小船を杭に舫った。
その後私も降りた。
無剣:ちょっと待ってて、ここの主人に挨拶してくるから。
島に入り玉鷲に挨拶してから、夜燭言を連れて桃林の中を見回した。
そよ風に吹かれ、桃花の花びらが舞い落ちた。まるで仙界にいるみたいだった。
夜燭言:桃源郷とかいうのもここには勝てないかな。
無剣:いつか世界平和になったら、ここに隠居したいと思った。
夜燭言:隠居か?
無剣:そうそう…
無剣:それはとても贅沢な望みね。
と嘆くと、肩を優しく撫でられた。
夜燭言:心配するな。
無剣:?!
夜燭言:これから何があっても、
この夜燭言は
無剣の味方だってことを忘れるな。
夜燭言:ずっとそばにいてやる、
いつか魍魎が全滅し、天下泰平になるその日まで。
無剣:……ありがとう、夜燭言。
夜燭言:礼は要らん。
人に借りを作るのが嫌だから。
俺の命を勝手に使うがいい。
夜燭言:あなたの望みならば、
火の海であろうと、龍の巣であろうと、
必ず乗り越えてやる。
無剣:火の海にも、龍の巣にも行かないで。
無剣:私はあなたが無事に居られることしか望んでいないよ。
無剣:いつかこの世に邪念がなくなったら。
あなたと二人でここで隠居し、思う存分に酒をのみながら談笑しよう。
夜燭言:はは、すごく良いね!
夜燭言:宜しくお願いします!
無剣:宜しくお願いします!
真の目的
盃を三つ取って、三つの甕の酒をそれぞれに満たした。そして盃を夜獨言の前に並べだ。
無剣:どうぞ。
夜獨言はまずゆっくり一つずつ酒気を嗅いて、満足げな顔をした。
夜燭言:正直に言うが、
今日この三つの甕を渡してくれないと、もう絶交するぞ。
無剣:ほう?
渡さないと、多分剣塚の扉に縋り付いて離れないだろう?
夜燭言:さすが無剣だ、よく俺の性格を分かっている。
無剣:でも、軽々と渡すのもつまらないね。
そうだ。
無剣:あなたは賭けが大好きでしょう?だから賭けようか。
あなたが勝ったら、酒をあげる、
その名前と作り方も教えてあげる。
夜燭言:面白い。
無剣:もしあなたが負けたら……
夜燭言:なら俺はこの酒を断念する。
無剣:わかった!
夜燭言:何を賭けるか?
無剣:一口だけでその三杯のどれがどれか当ててみてください。
チャンスは一度っきりだから、例え一種間違ってしまってもあなたの負けだからね。
夜燭言はえっとして大笑いをした。
夜燭言:ははは、面白い。やる気が出たぞ!
夜燭言:じゃあ始めるよ。
無剣:どうぞ。
夜燭言は一杯目を飲んで、目を閉じて後味を吟味した。
夜燭言:いい、いい酒だ!
こんな美酒を見逃したら、死ぬまで悔やみ続けるだろう。
無剣:じゃあ当ててみて。
夜燭言:この一杯は絶情谷からだ。
無剣:なんで?
夜燭言:最初口に入った時は辛くて熱かったが、喉を通った時は甘く優しく感じた。
絶情谷に情花の他に多種の薬草も植えていた。原料に薬草を入れてこそ、この味を醸し出せるんだよな。
正解だったかな?
私は黙って頷いた。
無剣:次に行こうか。
二杯目を飲み終わった夜燭言は恋々として唇を舐めた。
夜燭言:これは桃花島からだ。
無剣:…はぁ…
夜燭言:酒気は濃くても、桃花の香りを隠せない。それに……
無剣:なに?
夜燭言は盃の中身を見せた。
夜燭言:ひとひらの桃花の花びらが浮かんでいた。
言われるまでもなく、夜燭言は一口で最後の一杯をのみ乾いた。
彼は寄せた眉を広げ、ますます確信の表情になった。
夜燭言:最後の一杯は爽やかで甘かった。ちょっと涼しく感じて、竹の匂いがした。
竹林の中に埋まっていたからに間違いない。
無剣:その通りだわ。
夜燭言:剣塚の主よ、あなたの約束を実行してもらおう。
夜燭言の揶揄いを無視して、三つの麺を持ち出して、彼の前に置いた。
無剣:一つ、名は「照夜」、流光山の渓流に醸造され、
闇夜を照らす消えない光を表す。
無剣:一つ、名は「燭華」、絶情谷に醸造され、
他人のために自身を燃え尽くす蝋燭を表す。
無剣:一つ、名は「香言」、桃花島に醸造され、
破れない誓いを表す。
夜燭言:「照夜」、「燭華」、「香言」……
夜燭言:夜……燭……
夜燭言:君は……?
夜燭言はどんな表情をするかを忘れたようにボーッと私を見つめた。
無剣:これが私の中のあなたのイメージである。
酔ったからか、夕焼けが映ったからか知らないが、彼の顔色に微かな赤みが滲んだ。
夜燭言:これはあまりに貴重すぎるものだ。
無剣:返さなくてもいいけど。
夜燭言:……よくそう言えるな。この俺の財産を蕩尽しても返さないけどな。
無剣:お断りだ。
無剣:あなた自身を返しにしたらどうだ。
夜燭言:……
夜燭言:はいはい。
無剣:夜燭言は甕を開け、机の上に並べた途端、
人を酔わせるほど酒の香りが部屋じゅうに満ち溢れた。
夜燭言:この俺でよければ、喜んで。
同盟会話
○○の夜燭言:正直に言えば、俺の双刀は速いが達人に比べればまだ甘い。
○○の夜燭言:これまでのところ、敵に勝てたのはただの運と意外な会心の一撃によるものだといっても過言ではないだろう。
○○の夜燭言:「友人のお世話」をするためにも、もうぶらぶらしていることはできないな。
○○の夜燭言:君はどんな友達が欲しいんだい?
○○の夜燭言:俺が友を作る上で欠かせないのは、一杯飲み交わすか、一度賭けをするかだ。
○○の夜燭言:出身と武功ではなく、誠意と仁義の方がよほど大切だと思うがね。
○○の夜燭言:絶命堂は潰したが、局面への影響は小さい。
○○の夜燭言:絶命堂は血蓮宮の支配下の小さな組織にすぎない。木剣の勢力の中では捨て駒にすら数えられていないだろうさ。
○○の夜燭言:もう少し情報があれば……
判詞
二句目 蝋燭を持ち睨み合って何度も同じ顔
三句目 二本の刀が形か影か拘らずに
四句目 千両の金が貧乏かどうか問わない
五句目 朝星や花海が雲とともに消えてゆき
六句目 夜雨や寒江が目の穴を注いでくれる
七句目 情が多いと疲れるだけで
八句目 夜中に賢さを賭け合う
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コメント
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・正直に言えば、俺の双刀は速いが達人に比べればまだ甘い。
これまでのところ、敵に勝てたのはただの運と意外な会心の一撃によるものだといっても過言ではないだろう。
「友人のお世話」をするためにも、もうぶらぶらしていることはできないな。0
削除すると元に戻すことは出来ません。
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